English article here. About USETSU presets (English)
写真家の保井崇志です。私がLightroomに初めてふれたのが2013年のこと。当時は現在のようなサブスクリプションではなく「Adobe Photoshop Lightroom 4」という買い切りのソフトウェアでした。購入時のメールを確認してみると、お値段 12,800円。当時はプロでもなんでもなかったので、ソフトウェアにこの金額を出すのはとても勇気がいることでした。
ほどなくして写真活動に欠かすことのできないパートナーとなり、以後10年間Lightroomをたちあげない日はないというくらい使い込んできました。
そして2023年、集大成的な写真集「PERSONAL WORK」を出版しました。約15万枚の過去の写真と向き合い、セレクトし、再編集し、プリンティングディレクターと濃密なディスカッションをへての色校正など、写真集完成までの過程で、今まで以上に自分の写真の色に向き合ってきました。ここを一つの区切りと考え、Lightroomのオリジナルプリセット「USETSU presets」を販売します。
Before - After
Lightroomプリセットの購入は必要ない
実をいうと、個人的にはLightroomのプリセットの購入は必要ないと思っています。まず第一に、いざクリエイターのプリセットを購入しても、自分の写真はあくまで自分の写真で、そのクリエイターの作例のような写真にはならないからです。さらにカメラメーカーの違いによって相性があったりと、不確定要素が多いというのが正直なところ。
現に私もいくつかクリエイタープリセットを購入しましたが、いまいち合わないというか、期待したほどの効果が得られないこともありました。
とはいえ「販売します」と銘打った記事なので、あえて購入のメリットをあげるとしたら、そのクリエイターの何万枚もの「写真編集ディープラーニング」の結果を学べるというのがあります。私でいえば10年、約15万枚の写真を編集してきた結果、その落とし所といえるのが今回の「USETSU presets」になります。
ですので「これからLightroomを始めたい方」や「いまいち自分のプリセットに満足いっていない方」にとっては絶好のショートカット、もしくはヒントになるかと思います。
私のように写真を生業としている人は、継続的に何百枚と納品する必要があるので「1枚を100%」ではなく「数百枚をちゃんと85%に引き上げる」という思考と目的でプリセットを作成しています。はじめから最大公約数を導き出すことを念頭に置いて各パラメータを調整しているので、プリセットをそのまま使うも良し、ベースとして独自の色に仕上げるも良し、そういった柔軟性を持ったプリセットとなっています。
Before - After
そして、各カメラメーカーの違いによって相性がある点ですが、今回「USETSU presets」を制作するにあたって、何人かのクリエイターに協力をお願いして各メーカーのRAWファイルで試させていただきました。比較的どのメーカーにも合うように設定してありますが、とはいえ保井はFUJIFILMのカメラを使用していますので、当然FUJIFILMとの相性が抜群だといえます。
そのうえで「USETSU presets」の概要に入る前に、いくつか押さえるべきポイントをお伝えしておきたいと思います。
RAW現像の重要性
LightroomではRAWファイルで現像します。大きく2つ理由があって、1つはRAWファイルはJPEGに対して現像の際に利用可能な、多くの情報が含まれているから。
そして2つ目は、プロファイルの選択肢が豊富だからです。
プロファイルは矢印の箇所から選択する。
プロファイルもまたプリセットと同じフィルターのような役目を果たします。編集パラメータが変動するプリセットに対して、プロファイルは編集パラメータが変動しません(一部のプロファイルは適用量を選べます)。
プロファイルは編集パラメータが動かないので、下地のようなものといえます。もちろん後から変更は出来ますが、基本的には現像のスタートラインと認識しておくといいと思います。
JPEGに対してRAWはこのプロファイルの選択肢が多いのです。ドロップダウンから「カメラマッチング」を選択すると各カメラメーカーに用意されてあるプロファイルも選択可能です。カメラマッチングはJPEGでは選択できず、それはすなわちプロファイルが適応された後だということです。
USETSU presets では「Adobe標準」を初期設定としています。私はFUJIFILMのカメラを使用しているので、カメラマッチングから「Pro Neg Std」か「PROVIA/標準」を選択して使い分けています。
プロファイルの選択によって色味やコントラストが変わる。
このプロファイルの選択、さらに適用量のさじ加減もまた、写真の個性となります。プロファイルは編集パラメータが動かないので、まれに自分の意図しないプロファイルを選んでいるケースもあるので気をつけてください。
編集パラメータのそれぞれの位置づけ
ここで各パラメータについて詳しい説明はしませんが、それぞれのパラメータは相関関係にあるので、その位置づけをイメージしておくといいと思います。実際の写真を見ながら、その変化をイメージしてください。
撮ってだしの状態。プロファイルは「Adobe標準」
まず一番大切なパラメータはもちろん「基本補正」です。ここは最初から最後まで微調整するパラメータになります。露出やホワイトバランスが適正でなければ、どれだけ他のパラメータで調整したとしても迷子になること必至です。
次に大切なパラメータは「トーンカーブ」。ここで細かいコントラストや、色の調整をします。具体的にはポイントカーブの方ですが、少しカーブを曲げるだけで大きく写真が変化します。車でいうとアクセルのようなイメージ。
トーンカーブを調整。ここでは大胆にコントラストを強くする。アクセルを踏むイメージで。
トーンカーブでアクセルを踏んだら「HSL」でブレーキを踏みます。それぞれの色の調整をしながら、適正なスピードに落ち着かせます。基本補正もここではブレーキの役割をします。
HSL・基本補正を調整。シャドウとハイライトのバランスや色を見ながら
コントラストを適正に落ち着かせる。ブレーキを踏むイメージで。
要するに、このアクセル(トーンカーブ)とブレーキ(HSL・基本補正)を交互に踏みながら、気持ち良く車を走らせるイメージ。これがLightroomの現像だと私は考えています。
そしてある程度慣れてきたら、個性を出すために「カラーグレーディング」を使用します。補色の関係性などを考慮しながら、自分らしいと思える写真に仕上げていきます。
カラーグレーディング。アスファルトの色に注目すると
差し込んだアンバー色が効いているのがわかる。
「ディテール」や「キャリブレーション」もまた、仕上げの微調整に必要となります。個人的には周辺光量を落とした写真が好きですが、これは人それぞれでしょう。
Before - After
以上のようなポイントを押さえておけば、プリセットを購入することなく、ご自身でオリジナルプリセットを作成しようと思えるかも知れません。あとはどれだけ編集の枚数を増やして、最適解を見つけられるかということになります。
さて、それでも「USETSU presets」に興味があるという方は、以下の概要にお進みください。
概要「USETSU presets」by Takashi Yasui
本コレクションには合計10個のプリセットが入っています。
「侘び」「寂び」「しおり」「細み」「軽み」の5種類あり、それぞれにA面・B面の入った構成となっています。
- 「侘び」・・・ストリート・自然向き
- 「寂び」・・・モノクロ
- 「しおり」・・・ポートレート向き
以上の定番プリセットに対して、
- 「細み」
- 「軽み」
は、映像的な印象のプリセットとなっています。
【侘び】
01 WABI-A
今回のコレクションで一番の本命プリセット。何年たっても使い続けられる、流行に左右されない理想のプリセットを目指しました。
繊細に調整したコントラストは「陰翳礼賛」の世界を意識したものです。シャドウはディテールを失わないギリギリのラインまで落としつつ、差し込んだアンバー色によって温かみを感じさせます。中間調からハイライトへ補色のロイヤルブルーを入れることで、色のコントラストが生まれ、写真全体に深みを与えます。
02 WABI-B
「WABI-A」と性格違いの別バージョン。「陰翳礼賛」のコントラストはそのままに、このプリセットでは全体にシアン・ブルーと同色系をカラーグレーディングしています。クールな印象で、朝の湖畔や雨に濡れた路地、夕日の逆光などと相性が良いです。ブルーに振りすぎた場合はホワイトバランスで調整してください。
今回のプリセットは全て「Adobe標準」プロファイルに設定していますが、必要に応じて「Adobeカラー」を使うと色やコントラストに深みが増します。
【寂び】
03 SABI-A
今回のコレクションは「タイムレス」というテーマを掲げています。そのためモノクロのプリセットを入れることは必然でした。このプリセットでは上品なコントラストと粒子感を意識。閑寂枯淡の美しさを目指しました。カラーでは見えてこなかった写真の魅力が、モノクロ写真によって再発見されるという経験は、とても写真的だといえます。
04 SABI-B
「SABI-A」に対してコントラストを落としたバージョン。ポートレートにも使用できます。その場合「白黒ミックス」のオレンジを上げることで、肌の明るさが持ち上がるのでお勧めです。逆光の街の写真とも相性が良く、等価的な、優しい印象の白黒写真に仕上がります。
【しおり】
05 SHIORI-A
「しおり」は自然光のポートレートと相性の良いプリセットです。当初は「WABI-A」と同じようにシャドウにアンバーを差し込んでいたのですが、肌色との相性を考えてグリーンに振ってみると、より品の良い仕上がりになりました。肌色に関しては適宜マスクやHSLのレッド・オレンジで調整してください。人はもちろん、動物の写真にもお勧めです。
06 SHIORI-B
「SHIORI-A」と性格違いの別バージョン。コントラストをポートレートに最適化しました。トーンカーブとカラーグレーディングでシアン・ブルーを加えているので、クールな印象のポートレートに仕上がります。画面の余計なイエローを払ってくれるので、物撮りの写真でも一発でハマることが多いです。こちらも肌色は適宜マスクやHSLのレッド・オレンジで調整してください。
【細み】
07 HOSOMI-A
「侘び」から発展していったプリセット。といっても原型をとどめないほどの浅いシャドウで、幽玄さ、儚さを意識しました。曇りの日のポートレートや室内撮り等との相性が良いですが、どんな写真に使用してもハマるので、思いのほか汎用性があります。
08 HOSOMI-B
「HOSOMI-A」と性格違いの別バージョン。よりブルーを強調した仕上がりで、こちらも汎用性が高いです。「細み」のこの汎用性の高さは、写真的な主張を弱め、映像的な印象に仕上っていることが一因ではないかと想像します。スクリーン越しに写真を見ているような感覚が味わい深いです。
【軽み】
09 KARUMI-A
「細み」から発展していったプリセット。映像的な表現から写真に揺り戻しました。一度「細み」を経由することで、どこか写真の一部が動き出しそうな印象を残すことができました。シャドウを浅めにとり、補色関係にあるアンバーとロイヤルブルーを差し込みました。
10 KARUMI-B
「KARUMI-A」と性格違いの別バージョン。こちらはシャドウのシアンが目立ちます。意図的にティール&オレンジを狙っても面白いです。ストリート写真とも相性が良く、「侘び」よりも映像的、「細み」よりも写真的な印象に仕上がるので、組写真に最適だといえます。個人的に「軽み」はInstagramのストーリーズでよく使っています。
その他のお知らせ
「USETSU presets」は以下のチェック項目で更新しています。ご自身でプリセットの更新をする際は適宜チェックマークを入れるようにしてください。
「USETSU presets」には合計10個のプリセットに加えて、「+Reset」「+Natural」というプリセットもオマケで入っています。「+Reset」はその名の通り。
「+Natural」は、最低限のコントラスト・色味の調整にとどめたプリセットです。商業写真では大幅な写真編集が必要とされないケースもあり、こういった性格のプリセットもあると便利です。
Before - After
USETSU presets FAQ
商業写真の編集に USETSU presets は使用可能ですか?
もちろん可能です。仕事でも使用していただけることを念頭に制作しました。
プリセットはモバイルでも使用できますか?
はい、モバイルでもインストールできるDNGファイルを同梱しています。
プリセットのダウンロードについて
ご注文後、コンテンツにアクセスできるURLがメールで送付されます。また、ご注文画面の「Access Digital Content」ボタンからもアクセスできます。
Lightroomにプリセットをインストールするには?
返品・返金は可能でしょうか?
ご注文後の返品および返金は出来ません。
プリセットの20%オフは新規の同時購入のみですか?
以前に公式サイトで写真集を購入した方は、会計画面でクーポンコード「P601NAJWDA11」を入力していただけると20%オフとなります。
クーポンコードが有効になりません
クーポンコードの反映には写真集「PERSONAL WORK」購入時と同じ環境でのログインが必要になります。メールアドレスをご確認ください。
プリセットを購入しました。後日、写真集を購入する場合は20%オフになりますか?
20%オフは、あくまでプリセットの割引で、写真集は割引の対象外です。同時購入をご検討ください。
USETSU presets を改変して販売したり、そのまま販売してもいいですか?
だめです。